承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

コミュニタリアニズムとリベラリズム その1

個人主義のせいで人々は孤独になったのだと考え、家や村落などの伝統的な共同体を懐かしむ人は少なくありません。 村に属せば自動的に仲間の輪に入れるのでしょうか。たとえ村に生まれても、親が移住者であるが故によそ者扱いされることがあります。 代々村…

共同体 束縛と自由のダイナミズム

日本を含め国家の多くは、国をひとつの共同体と見立てて主権者は国民であるとする国民国家モデルを採用しています。 その対極にあるのは、国は誰かの所有物であり、所有者すなわち主権者が支配下にあるものを好きなように統治できるという専制国家モデルです…

共同体の乗っ取り その3

前回はオーウェルの「動物農場」を素材に、共同体の乗っ取りの手法について考察し、以下のように分類しました(注1)。 A 敵の存在の強調 B 事実認識の妨害 C 共同体の分断 D 共同体のカルト化これらはすべてこのブログで言及してきた、承認欲求の強い状態…

共同体の乗っ取り その2

共同体の乗っ取りに関して是非とも読んでいただきたい小説があります。オーウェルの「動物農場」です。 ネット上でも読めます。 blog.livedoor.jpこの小説はロシア革命とソビエト連邦に関する寓話として読まれることが多いですが、政権の左右を問わず、また…

共同体の乗っ取り その1

現在大きな話題となっている森友学園や加計学園の問題の核心は、行政が特定の人に対しては特別な配慮をすることにあります。 過去に注目を浴びたケースと大きく異なるのは、国家公務員が個人的に欲に眩んで便宜を図るのではなく、一般国民の知らない特権集団…

安心と諦め その2

前回世界と繋がっていると感じることは安心と諦めをもたらすと書きました。 安心と諦めという組み合わせから、停滞をイメージする人もいることでしょう。不安と希望があるからこそ前進するのだと考える人は少なくありません。蹴落とされないように必死で努力…

安心と諦め

人は否応なしに世界と繋がっていると前回述べました。 動物や自然など人間以外の森羅万象にまで範囲を広げ、かつ現在のみならず過去や未来まで視野に入れれば、誰もが繋がりを実感することは可能です。繋がりを縁と言い換えることもできます。 それぞれの縁…

つながるということ

前回ウロロボスの蛇のイラストは尾を食べているとして話を進めました。これに違和感を感じた方もいるでしょう。本来のウロロボスは尾を咥えているものです。始めと終わりが繋がり円環を形作ることから、終わることなき循環と、完結しており欠けるものがない…

生存競争と甘え その3

個人の運の善し悪しを無視して競争や努力を強調する人は、自分は向かうべきゴールを知っていると軽信しているのかもしれないと前回述べました。 「生存競争なのだから甘えるな」という見解を持つ人の多くは、とりあえず金があれば生き残れる確率が高いと考え…

生存競争と甘え その2

前回からの続きです。 ダーウィンの進化論を、競争に勝ち抜いた者が生き残り子孫を残すことで進化していくことだと理解し、人間も同様だ甘やかすなと結論付ける人は少なくありません。進化論は(1)個体差が存在すること、(2)環境に適さなかった個体は淘汰…

生存競争と甘え その1

前々回に尊厳はセーフティネットだと述べました。セーフティネットに関しては「甘やかせば人間は怠惰になるだけだ、死ぬ気で競争してこそ人は最大の力を発揮するものだ」という反論がつきものです。 今回はこの反論に関して掘り下げてみましょう。そもそも競…

劣等感からの回復

前回は尊厳について述べました。「底が抜けつつある今の日本では、尊厳なんて考えることすら無駄だ」と思う人もいるかもしれません。しかし人には尊厳があるという考え方は、社会がどうであろうとも個人が生きやすさを求める上で役に立ちます。劣等感を例に…

自尊心と尊厳

前回は自尊心について考察しました。 自尊心に似た言葉に尊厳があります。「個人の尊厳」という言葉は、人間は生まれながらに持つ根源的な価値を意味します。それはすべての人に同等に存在するもので、増えたり減ったりするものではありません。従って「私は…

自尊心を持つのは良いことか

前回より健全な承認欲求はあるのかについて考察しています。今回は自尊心は重要であり、それと重なる承認欲求は良いものだという考えについて検討します。自尊心とは何でしょうか。自尊心と承認欲求はどのような関係があるのでしょうか。 前回言及したマズロ…

健全な承認欲求?

健全な承認欲求もあるのだ、承認欲求を悪いものだと見做すことは誤りだという意見を耳にすることがあります。 今回は健全な承認欲求はあるのかについて考察します。健全な承認欲求があると考える人はほぼ皆揃ってマズローの心理学を挙げます。 マズローの欲…

他者を受容するということ

前回は共感を求めることの問題点について考察しました。共感を求める人の多くは、共感されることは受容されることだと感じています。そこで今回は受容について考察します。受容とは、受け入れることです。それは二つに分かれます。 一つは行為の受容、もう一…

共感を求めることの問題点

前回はなぜ人を殺してはいけないかについて考察しました。この種のテーマはしばしば共感の押し付けがなされます。しかしそれで納得できるような人であれば、はじめからこのような問いかけはしなかったでしょう。例えば「世界でたったひとつの欠けがえのない…

なぜ人を殺してはいけないのか

人を殺してもよいという考えには、二種類あります。一つは誰もが好き勝手に殺してよい、殺されたくなければ防御しろという弱肉強食的な世界観を肯定するものです。 思想としてこのような世界を求める人は稀でしょう。殺すことに快楽を感じる人や自棄になって…

イタリア新市長とイギリスのEU離脱 その4

前回ポピュリズムだと非難することは、「愚かな君たちには正しい判断はできないよ」「悪い奴が騙そうとしているぞ」という二つの主張に異ならず、一番重要なポイントのなぜそちらを選ぶべきかの説明がないがしろにされていることを述べました。これは「お前…

イタリア新市長とイギリスのEU離脱 その3

ポピュリズムとは、エリート主義と対をなす概念です。大衆の選択とエリートの選択が異なる時にこの概念が浮上します。例えばマスメディアで識者が口を揃えて褒め称えたお陰で当選した候補者に対しては、誰もポピュリストだとは言いません。しかし識者がさん…

イタリア新市長とイギリスのEU離脱 その2

これをお読みになる方はイギリスのEU離脱の方により関心があることは承知しています。イタリアのことを書くのは、他のメディアに書かれないEUが嫌われる理由を説明しやすいからです。 前回はイタリアではEUに対する期待は大きかったというところまで書きまし…

イタリア新市長とイギリスのEU離脱 その1

脱線ついでに、この一週間のヨーロッパの大きな動きに関して考察しておきます。日曜日のイタリア地方選挙でのローマとトリノの新市長誕生と木曜日の国民投票によるイギリスのEU離脱についてです。EU離脱を求めるのは移民を排斥したいナショナリストか、移民…

BIその5 スイスの国民投票の結果について(3)

前回述べた通りヨーロッパの国々で導入が検討されているベーシックインカム(BI)はほぼ負の所得税タイプです。 所得の低い人のみが給付を受けるのであれば、生活保護制度と変わらないのではないか、むしろ働けるかどうかを考慮しないならば労働意欲を削ぐ点で…

BIその4 スイスの国民投票の結果について(2)

ベーシックインカム(BI)と一言で言っても、その内容は論者によって異なります。 今回スイスで国民投票で導入の是非が問われたのは無条件の基礎所得をすべての住民にという方向付けだけであり、支給額も制度の詳細も白紙だったことは前回説明しました。 そ…

BIその3 スイスの国民投票の結果について(1)

続きを書く予定でしたが一旦中断して、昨日出たスイスのベーシックインカム(BI)に関する国民投票の結果について書きます。日本円にすればおよそ28万円という金額と、投票者の8割という圧倒的多数の国民からBI導入を否定されたという結果のみが伝えられ、そ…

BIその2 束縛と自由のダイナミズム

前回ベーシックインカムはリセットボタンとしての性格があると述べました。今回はBIに限らず新しいシステムについて考察する時に鍵となる、社会のダイナミズムを形成する二つの潮流について述べます。人間は社会的な生き物であり、全く孤立して生きることは…

BIその1 社会のリセットボタンとしてのベーシックインカム

承認欲求には「自分」「OK」「信じたい」という三つのキーワードがあります。このうち特に「OK」について考える切り口として、これから数回にわたってベーシックインカム(BI)について考察します。多くの人は自分はOKだと考える根拠として、経済的に自立し…

二極化について

前回インターネットに関して二極化しているように見えると書きました。この二極とは「信じたい人」と「知りたい人」です。前回衆愚化という言葉を使用したことは、知性による二極化と誤解を招く表現だったかもしれません。信じたい人は信じたいことを言って…

インターネットについて

前回まで二回にわたり、知能が高く私利私欲のないはずの人工知能の振る舞いが、承認欲求の高い人と類似する可能性について述べました。考察にあたって、AIの存在目的、閉じたシステム、論理から統計処理への重心移行という三点に注目しました。この三点はイ…

人工知能と承認欲求 その2

前回からの続きです。前回は生物とAIの違いの第一は存在目的の有無であると述べました。 生物とAIの違いの第二は、枠の有無です。開いたシステムか、枠の中に閉じているシステムかということです。(注)AIは計算機から発達したものであり、明確な枠がある状…