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承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

イタリア新市長とイギリスのEU離脱 その3

ポピュリズムとは、エリート主義と対をなす概念です。大衆の選択とエリートの選択が異なる時にこの概念が浮上します。

例えばマスメディアで識者が口を揃えて褒め称えたお陰で当選した候補者に対しては、誰もポピュリストだとは言いません。しかし識者がさんざん誹謗したにもかかわらず当選した人は、ポピュリストだと言われます。

ポピュリズムという言葉が否定的なニュアンスで使われる背後には、エリートは常に正しいというエリート主義的な考えがあります。
そのために、民衆がエリートと異なる選択をしたのは民衆が愚かであるからか、ポピュリストが民衆を騙したからだという思考に行き着きます。

今回のイギリスの国民投票についても、離脱が多数だったのは労働者階級や高齢者など思慮の浅い人々の投票のせいだと言いたげな解説を聞いた人は少なくないでしょう。

ポピュリズムとは、日本語に直訳すれば民衆主義です。民主主義とどう異なるのでしょうか。
民主主義(デモクラシー)とは正確には民主制のことであり、政治体制の分類のひとつとして、専制、独裁制、全体主義との区別です。

政治に関して民衆は愚かだと強調すれば、民主制よりもエリート専制の方が良いという結論に傾きます。
今回も国民投票を実施したのが間違いだった、国民に判断を委ねるべきではなかったという見解がありました。

しかし内心は民衆は愚かだと思っているエリートでも、選挙で代表者を選ぶ間接民主制まで否定したくありません。民主制は民衆を自分達の望む方向にうまく誘導できるならば、少ない手間で不満を封じることが可能な便利で持続的な統治方法であるためです。

そこで民衆は愚かだと言う代わりに、悪いのは民衆を騙すポピュリストだという方向に世論誘導を試みます。ポピュリストは自分の利益のために甘言で民衆の支持を集めているのであり、本当に民衆のことを考えているのではないという主張です(注)。

前々回に、これは一見遠い欧州の話ながら、支配に関する問題という点で毒親問題とも通貨の問題とも地続きであると書きました。
親子問題に喩えるならば、エリートが親で民衆が子です。そしてポピュリストとは親の意に反して子供たちの望むものを与える祖母です。

ここで考慮すべきは、次の三点です。
1.親が子の望むものを与えない根拠
2.子の判断能力
3.祖母の目的

もしも子が幼稚園児で、欲しがるお菓子を親が与えないのは夕食を食べなくなるからであり、祖母の目的は孫が嫁よりも自分に懐くことだとしたら、この祖母は危険な存在だという主張に多くの人は頷くでしょう。

しかし子が幼稚園児で、祖母の目的は孫が懐くことだとしても、欲しがる肉や魚を親が一切与えない理由が「ベーガンは健康に良い」と考えているからだとしたら、祖母が居て良かったと考える人の方が大多数でしょう。

また子が成人しており、欲しがっているのは結婚の同意であれば、口添えする祖母の存在は重要ではありません。親が反対する理由を説得できなければ、子は自分の意志を貫くまでです。

このように考察すれば、一番大切なのは1の根拠であることが分かります。しかしポピュリズムに関する言及は2の「愚かな君たちには正しい判断はできないよ」や、3の「悪い奴が騙そうとしているぞ」ということです。

続きます。


(注)まさにこの切り口で語る例がありました。こちらです。
toyokeizai.net
「この作り出された空虚感や幻想、欺瞞により」「馬鹿げた考えを植え付けられ」「茶番劇を選択するよう誘導された」という言い回しに注目して下さい。

同じサイトのこちらの記事とも比較してみて下さい。どちらが具体的で理解しやすいでしょうか。
toyokeizai.net