読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

アイデンティティとは何か その4

アイデンティティ

前回はアイデンティティとキャラクターの関係について述べました。
キャラクターは自分から望んで演じるものとは限りません。私たちはしばしばこう振る舞うべきだとモデルを押し付けられます。例えば子供の頃から「子供らしくない」と非難されたり、「おみやげをもらったらもっと喜ぶものだろう」と純粋な子供キャラを演じることを求められた経験がある人は少なくないでしょう。

「こう振る舞うべき」という押し付けが強い環境に育てば、どのようなキャラクターを演じればよいのか空気を読むことが重要になります。ありのままでは良くないと思うようになり、自然な情動をコントロールしなければ不安を感じます。
キャラクターという檻に閉じ込められる状態と言い換えてもよいでしょう。

しかしキャラクターを演じることはストレスを伴います。環境に応じていくつものキャラを使い分けなければならないとなれば尚更です。
このストレスに対処するための方法は複数存在します。

A 演じているのではなく本当にそう感じているのだと思い込む
B 正反対のキャラクターを演じる場を作ることでバランスをとる
C ひとつのキャラクターだけで済むようにする
D ストレスに耐えて頑張っている自分は偉いと考える
E キャラクターを演じる意味があるのかを問い直し、最低限に留める
F キャラクターやアイデンティティではなく、個々の行為や状況に焦点を当てる

Aはキャラではなくて本当に自分はそう振る舞いたいのだと信じようとすることです。信じたい状態については過去に考察しました。
例えば婚活で妥協して決めた結婚相手について「自分はこの人に恋愛感情を抱いているのだ」と信じようとするケースです。そうすることで好きではない異性と共に過ごす違和感を封印することが可能です。ストレスを見えないように封印するのであって、解消ではないことに注意が必要です。

Bは一つ一つのキャラは極端でも、その間でバランスをとることによってアイデンティティを維持することを目指します。
例えば家でいつも兄にいじめられる子供が学校ではいじめっ子であるケースです。これは弱いところにシワ寄せが集まるために問題が生じやすいでしょう。

Cはひとつの集団にどっぷりと浸かることで、多くのキャラクターを使い分けるストレスを解消しようとするものです。例えば不良仲間と朝から晩まで一緒に過ごすケースです。
ひとつのキャラのみであるならばAの状態にすること、つまり本当に自分はそういうキャラなのだと信じようとすることも容易になります。

Dはストレスを承認欲求を満たす餌として利用します。「役者のようにいろんなキャラを頑張って演じる自分はすごい」と意味付けることでポジティブに受け止めます。

Eはキャラクターを演じる必要の有無を見極めることです。例えばキャッチセールスを行う販売員であれば愛想良く通行人に話しかけることが要求されます。それは職業上のキャラであり労働として対価を得ているのだと納得できれば、一時的な仮面だと割り切ることが可能になりストレスは低下するでしょう。

Fは自分の役割よりも状況や感覚を重視することです。
上記のキャッチの販売員を例にすれば、どう振る舞えば客が足を留め興味を持つのかという点に注目します。様々なやり方を実験しながら効果的な方法を探る間は、自分に似合わない振る舞いをしているというストレスは感じないでしょう。

アイデンティティを自分らしさのことだと考える人は少なくありません。しかし自分らしさに拘っているはずが、ステレオタイプに陥っているケースが多く見られます。それは承認欲求とキャラクターという要素が介在するためです。
写実的な風景画は、自由なはずのモダンアートよりも画家の特徴が色濃く滲み出ます。アイデンティティという箱に拘るよりも中身である個々の感覚や行為に注意した方が、承認欲求から自由になることで結果としてその人らしさが滲み出ます。

関連ポスト
「本当の私」の落とし穴 - 承認欲求の考察
同調圧力 その1 人と同じがいいと思う理由 - 承認欲求の考察
信じるということ - 承認欲求の考察