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承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

マイノリティとコミュニケーション

コミュニケーション能力と承認欲求の関係について前回からの続きです。glicine394.hatenablog.com

前回示した四つの先端は固定的なものではありません。現在どこに位置するかよりも、どの方向に向かっているかが重要です。

誰でもヒキ学者のポジションになる可能性が存在します。自分がマイノリティの立場で、かつ周囲が理解する気がない人達である場合です。例えば高齢者に囲まれて「近頃の若い者は…」と説教じみた話をされたら、反論するよりも口を閉ざすか場を離れようとする人は多いでしょう。障害や持病があり、どうせ説明しても人には理解できないだろうと思う時も同様です。

マイノリティの立場で、必要性から自分の状況や人との差異を説明して問題を解決する能力を身に付けた人がデキ上司です。彼は多様な人々が存在することを身をもって知っており、自分と異なる立場について自分はよく知らないので話を聞こうとします。
デキ上司には自分がマイノリティだと意識したことがないタイプも存在します。それは好奇心が高く、書籍や人の話を通して多様な人々が存在することを熟知している人です。

マイノリティが理解のない人に囲まれて「他の人と同じようにできないなんて、お前はだめな奴だ」という烙印を押されると、エア軍師になる場合があります。但しその状況ではすべてがエア軍師の方向に行くという訳ではありません。
「お前はだめな奴だ」という烙印に対して、4つの対応があります。

1「いや、私には皆さんと異なるこういう事情があるんですよ、ご理解下さい」と説明するデキ上司のポジション
2「君達には分からないだろうね」と距離を置き、ヒキ学者に留まる
3「自分はだめな奴なんだ、ガーン」と落ち込む 
4 承認欲求が発動し、「実は自分の方が上だもんね」あるいは「傷つけた悪いあの人、かわいそうな私」と考える

1のデキ上司は、相手が全く話の通じない人で説明が無駄だと判明すればやがて2のヒキ学者になるでしょう。コミュニケーションは、自分と環境の相互作用です。

3はその後「まあそう思われても仕方ないか…」と諦観すればヒキ学者、被害者意識に向かえば4のエア軍師です。(注)

4で自分を持ち上げたり被害者だと思うことで自分はOKだと自分で信じようとするならばエア軍師です。
一人で頭の中でそう考える場合もあれば、似た属性の人が集まり、別のマイノリティのターゲットを見つけて「あんな風にはなりたくない」とか「悪いのはあいつだ」と攻撃する場合もあります。

一方4から高いコミュニケーション能力で自分のみならず周囲のマジョリティにも「この人はすごい」あるいは「この人は被害者だ」と信じさせてしまうのがグル商人です。

コミュニケーション能力とよく喋ることは混同されやすいので注意が必要です。仲間内でよく喋るからといってコミュニケーション能力が高いわけではありません。

ヒキ学者は自分の話に耳を傾けて理解してくれる人に出会えば、それはめったにない機会なので饒舌になります。

エア軍師は似た者同士で集団化したりネット上で匿名であれば、大変饒舌になることもあります。

デキ上司は自分が話す必要性がなければ沈黙します。承認欲求が少ないので「陽気なのが良い人だ」「場を盛り上げるべきだ」などこうあるべきという思い込みがありません。状況に応じて聞き役になったり話し手に回ったりします。

グル商人は「しまった、怒らせてしまった」と相手に思わせるために沈黙したり、罪悪感を持たせるために涙を流したり、良い印象を与えるために饒舌になったりします。デキ上司のように状況に応じるのではなく、状況をコントロールしようとします。


(注)マジョリティがマイノリティを傷つけ精神的、物理的実害を与える場合の正当な被害の主張と、承認欲求の発動としての被害者性は異なるものです。これについてはこちらをご覧下さい。
被害者意識について - 承認欲求の考察