承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

同調圧力 その4 同調するかどうかの選択

今回は具体例から考えることにしましょう。
婚約者の実家に招かれての夕食はすき焼きです。あなたは皆が一旦口にした箸で同じ鍋をつつくことに嫌悪を感じます。不潔だから嫌だと言えば、皆に気を悪くされそうで心配です。どうしたらいいでしょうか。


同調圧力は認識される場合とされない場合があります。例えばトイレの素手掃除のように多くの人が抵抗を感じるような事柄であれば、圧力であると認識されやすいでしょう。ところがほとんどの人が同意することについて、自分だけが抵抗を感じることがあります。今回はこのケースです。

自分だけが異なる感覚を持つときには、間違っているのは自分であると考え自分の感覚を否定しがちです。
しかし生身の感覚を否定して無理に食べようとしても、潔癖な人であれば身体が拒否するかもしれません。自分の感覚を受け入れて、そう感じることに罪悪感を持たないことがまず第一のポイントです。

第二のポイントは、自分の罪悪感を避けるために相手が悪いという思考に転嫁しないことです。
婚約者一家は同じ鍋をつつくことに嫌悪を感じていません。これは感受性の相違であり、どちらが間違っているのかという問題ではありません。

第三のポイントは、婚約者の一家は意識的に同調圧力をかけている訳ではないことです。
彼らにとっては同じ鍋をつつくことは普通であり、あなたが嫌悪を感じていることを知りません。
もしも何も言わずに我慢して食べるならば、それは同調圧力に屈したのではなく、面倒を避けるために自主的に同調を選んだのです。つまり自発的同調です。

あえて同調するか否かは、同調することのハードルの高さと同調の利益不利益次第です。
不潔だと思う気持ちが軽いものならば、我慢して食べるのがひとつの選択肢です。この場合の利益は場の雰囲気を壊さないこと、衝突しないので楽なことです。それでは不利益は何でしょう。次回からも同じ状況が生じる可能性があること、自分を抑えた上での表面的な親しさに留まることです。
同調するという選択が不可能の場合もあります。抵抗感がとても強い時です。今回の例と異なりますがアレルギーがあるとかベジタリアンの場合なども、同調するという選択肢は存在しないでしょう。

同調しないと決めた場合について考察を進めます。
この際相手に配慮するのは当然です。目的は不都合を避けることであり、自己主張することや喧嘩を売ることではありません。そこでなぜ相手は同じ鍋をつつきたいのかを考えると、親しさとリンクしている可能性に気付きます。これは同調圧力その1で考察しました。とすれば同じ鍋をつつくことを拒否するならば、親しさを拒絶しているのではないと示す工夫をした方が良いかもしれません。

「すいません、私は潔癖症なところがあって、同じ鍋を口にした箸でつつくことは抵抗があるんです。」とカミングアウトした上で「最初に自分の分を取り分けても宜しいでしょうか?」とか「皆さん取り箸を使うようにお願いしてもいいですか?」と解決策を提示し、親しみは態度や会話で示すように気を遣うというのがひとつの方法でしょう。「今後のお付き合いを考えたら今のうちに言って置いた方がいいと思って」などと、親しくなりたいからこそ言ったんだと示すのも有効です。

あるいは食事は始まっており時既に遅しならば、「実は潔癖症なのでこういうのは苦手なんです、次回は取り箸を用意していただけますか」と正直に話し、「今日は卵かけご飯をいただきますので気になさらないで下さい。折角ご用意いただいたのに申し訳ありません」と謝罪することです。「使いやすい取り箸を知っているので次回は持参しますね」と、再訪するつもりだと示してもよいかもしれません。

嫌だということを示した上で今回だけは食べるという選択もあります。あなたの許容性のハードルの高さ次第です。但しこの選択はそれほど嫌ではないのにただ文句をつけたいだけだと受け取られる可能性があります。

あなたの申し出が相手一家にすんなり受け入れられる場合は問題解決です。
では受け入れられない場合は、何が起こるでしょうか。
長くなったので、次回に続きます。

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