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承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

同調圧力 その2 他者に同じ振る舞いを求める理由

同調圧力

前回を復習しましょう。
1 みんなと仲良くすべきという条件づけからのショートカット
2 管理する側の都合による条件づけ
3 経験知
4 判断回避
以上の理由から、みんなと同じが良いという価値観を身に付けるというところまで話しました。

自分が他者に同調することと他者も同調すべきだと考えることの間にはギャップが存在します。他者に対してみんなと同じように振る舞うことを求めるときに同調圧力となります。どうして他者を巻き込みたくなるのでしょうか。順次見てみましょう。

1では仲良くすることと同じ振る舞いをすることがリンクしています。それがリンクからショートカットになると、仲良くして欲しいと思えば同じであることを求めます。好感を持たれているということは自分はOKであると信じられる強い根拠となります。そのために相手に強制してまでも仲が良いということをアピールすることがあります。これは相手を嫌っていると思われたくないので相手に合わせる心理と表裏一体です。

2では管理者の側が便宜のために圧力をかけることは容易に理解できます。しかし同じ管理される側からも圧力をかけることもあります。連帯責任を負わされる場合や組織のアイデンティティが強い場合です。ブラック企業のケースを考えると分かりやすいでしょう。会社の一員としての自分、勤勉に働いている自分と、OKである自分を証明するために、経営者でもないのに他の同僚に過剰労働の圧力をかけます。

3では自分の経験知を善意で他者に押し付けるケースが想定できます。この押し付けを行うのはそれが不都合な人も存在することに思い至らない多数の側に居る人です。例えばアルコールを受け付けない体質の人に対して「酒が飲める方が仕事上の人間関係がスムーズになるから飲め、そのうち身体が慣れるから」と無理に勧める人は少なくありません。
承認欲求が強い人は「親切で忠告している自分」に関心が集中するために、相手にもそれがあてはまるかどうかは深く考慮しません。そのためにそれが相手に害を及ぼすことには思い至りません。同意されないと自分を否定されたと受け取り気分を害することもあります。

4ではみんなと同じにしておけば間違いないという推測を担保するために同調を求めることが考えられます。承認欲求が強いと、判断に際して自分のニーズよりもみんなの評価が重要になります。このように大勢に従う判断を重ねていると、判断を困難にするものとして多様性や無秩序に対して嫌悪感を抱きます。その結果普段からみんなと違う振る舞いを阻止して秩序を維持しようとすることがあります。

これらの四つに加えて、自分はみんなに合わせる努力をしているのだから、その努力をしない人はずるいという思いが他者への強要に繋がることがあります。ずるいと感じるのは、自分を抑制して人に合わせることが苦痛を伴うためです。苦痛を我慢してでも努力しない人間はだめな奴だと見下しつつも、そうしないで楽に生きている人間に嫉妬して、自分と同じ苦痛を味わせようとします。

こうして、「自分はみんなと同じが良い」という個人的な好みに過ぎなかったものが、いつの間にか入り込んだ承認欲求によって「みんなは同じように振る舞うべきだ」へと変化します。

承認欲求における「信じたい」という思惑の及ぼす作用も重要です。信じたいときには異なる見解は遠ざけて同じ見解の人間が群れることは、既に考察しました。
同調圧力が生じる環境での「みんな」はクラスの同級生だったり、職場の同僚だったり、同じ町内会の住民だったり、決して同じ見解を旗印に集まったグループではありません。従って様々な見解があるのは当然のことです。しかし信じたいという気持ちは偶然からなる集団を同じ見解のグループに作り変えようとします。
数の力や影響力の大きさによって同調するように圧力をかけますが、その力が不足している場合は内部分裂により派閥を形成することによって異なる見解を遠ざけようとします。

次回は同調圧力のかけ方とそれから逃れる方法について考察します。

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