承認欲求の考察

承認欲求をキーワードに、人間心理や社会を考察します。

同調圧力 その1 人と同じがいいと思う理由

時々女性向きの匿名掲示板で、化粧せずスッピンで外出することは是か否かという議論が起こります。1)個人の自由だ、2)状況によりけり、3)化粧すべきだという三つの見解に分かれます。最後の見解はルールが存在しない状況で他者が自分と同じように振る舞うことを求めているのですから、同調圧力です。40代の白髪は染めるべきかというのも同種の議論です。

承認欲求の観点から検討すると、同調を求めていても理由はさまざまです。例を挙げてみましょう.
自分は美しいから価値があると感じているAさんにとって、美醜は重視されるべきで、他の女性も気にすべきというのが理由です。
外出前にきちんと化粧して身だしなみの努力をしているBさんにとっては、努力は大切な価値で、努力を回避する人はだめだというのが理由です。
みんなと同じ振る舞いをするから自分はOKだと感じているCさんにとっては、足並みを揃えることが大切で、みんな化粧しているという理由で他者にもそれを求めます。

このように異なる理由から結果として他者に自分と同じ行動を求めています。これは広義の同調圧力です。人に強制する背景にはこうあるべきという価値観があり、それを満たしている自分はOK、その価値を無視する人は放っておけないという心理があります。

今回はCさんが持つような「みんなと同じであることが大切だ」という価値観をピックアップして考えます。この価値観の押し付けは狭義の同調圧力です。

どうしてみんなと同じが良いと感じるのでしょうか。

まず外からの条件づけがあります。幼稚園や学校ではみんな仲良くしましょうと教育されます。親しくなると同じしぐさをしがちであること、それを逆手にとってしぐさを真似ることで親しみを感じさせることが可能であると実験で確認されています。そのために「みんな仲良くすることは良いことだ」という刷り込みが、いつの間にか「みんなと同じ振る舞いをすることが良いことだ」という刷り込みになります。
そもそも「みんな仲良くすることは良いことだ」ということ自体も価値観の押し付けにすぎません。気が合わない人が存在するのは自然なことです。無理に付き合うよりも疎遠にした方がよいケースもたくさんあることに多くの大人は同意するでしょう。

仲良くすることとは無関係に、みんなと同じように振る舞うことが大切だと条件づけられる場合もあります。大勢を管理する手段として便利だからです。各自が思い思いに振る舞っている状況では、管理者にとって問題のある者を見つけ出すのに手間がかかりますが、同じように振る舞うことを刷りこんでおけば容易に発見できます。また一部を手懐けさえすれば簡単に全体を誘導することができます。

みんなと同じように振る舞って良い結果をもたらした経験から、自発的にこの価値観を身に付ける場合もあります。多勢ならば優勢になり相手が譲歩する場合が多いことは広く知られています。
逆に人と異なる振る舞いをして悪い結果をもたらした経験からこの価値観を支持する場合もあります。グループで食事に行き皆はカレーを注文したのに自分だけエビフライを注文したら、皆が食べ終わった頃に自分の料理が出てきたという類の経験は誰にでもあるでしょう。出る杭は打たれるということわざは、目立つことは不利益が多いことを知らしめます。

判断回避のためにこの価値観を身に付ける場合もあります。大勢がやっているのだから正しいだろうという推測に基づき、人と同じように振る舞えば自分はどうすべきか考えずに済むという考えが、みんなと同じであることに価値を見出します。判断の回避は知識や経験の欠如や自信のなさ、怠惰、責任を取りたくないという思いから生じます。以前述べた承認欲求が強くなると個性が希薄になるという話もこれに該当します。

以上のようにみんなと同じであることが大切だと思うに至る理由はたくさん存在します。つまりある人にとってはみんなと同じように振る舞うことには合理性があります。
次回はこの価値観を他者への強制するプロセスについて考察します。


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